しかし、水の状態のトリチウムが生物濃縮を起こすことは確認されていないため、こうしたツイートは「誤り」だ。 なかには、大規模な労働団体の幹部がツイートし、のちに誤りを認めて取り消した例もある。 ファクトチェックした。 大きく拡散はしなかったが、リプライ欄には「トリチウム水が生物濃縮する」という記述に対し、科学的根拠を求める声が相次いだ。 奧村氏はその後、「専門家の本によると、『内部被曝で健康破壊を起こす』『希釈しても生態系を通じて濃縮される』」といった趣旨をツイートした。 しかしその後、ツイートを削除したうえで、30日に「『トリチウム水』をめぐる記述に、科学的に明確な誤りがありました。ここにツイートを削除し撤回させて頂きたいと思います」と、自ら誤りを認めた。 「トリチウムが生物濃縮する」として海洋放出に反対する趣旨のツイートは、このほかにいくつもある。 しかし、そのほとんどは、奥村氏のように誤りを認めて取り消したりはしていない。 経済産業省によると、福島第一原発では、原子炉建屋に雨水や地下水が流入したりして、高濃度の放射性物質を含む「汚染水」が日々、発生している。 これを「多核種除去設備(ALPS)」などに通し、放射性物質を取り除く処理をかけたものが「処理水」。これまで全量を原発敷地内のタンクに貯蔵してきた。 しかし、処理水にはまだ、技術的に除去できない水素の仲間の物質「トリチウム(三重水素)」が含まれている。 この物質は自然界や水道水、大気中の水蒸気などにも存在している。「ベータ線」という弱い放射線を出すが、エネルギーが非常に弱く、紙1枚で遮ることができる。 こうしたことから、トリチウムは日本を含む世界各国の原発で希釈されたうえ海や河川などに放出されてきた。 福島第一原発では貯蔵タンクに限界が迫ってきており、国は来春に処理水を海洋放出するとしている。 資源エネルギー庁のホームページなどによると、水素の仲間であるトリチウムは水と結びつくことで、ほとんど性質が同じの「トリチウム水」として自然界に存在する。 地球上の生き物は大気中の水蒸気を吸ったり、水を飲んだりしてトリチウム水を取り込んでいるが、大半は尿や呼気などで通常の水と同じように10日間ほどで体外へ排出される。 生物濃縮とは、食物連鎖を繰り返して生物の体内に物質が濃縮されていくことをいう。 前述の通り、トリチウムは水と同じように体外に排出され、特定の臓器に蓄積されないことから、生物濃縮を起こすことは確認されていない。 また、「トリチウムが有機結合して危険な物質になる」との主張もあるが、この有機結合型トリチウムも最終的には代謝で排出される。 国の安全規制の基準である6万ベクレル、世界保健機関(WHO)の飲料水水質ガイドラインである1万ベクレルと、それぞれ大幅に下回る水準となる。 国際原子力機関(IAEA)も処理水の放出は「科学的に安全」としている。 福島の漁業関係者は、処理水の放出に反対する姿勢を崩していない。ただし、その主な理由は安全性を巡る議論よりむしろ、処理水の放出で「福島産の水産物は危険」といった消費者の誤解を招いて売れなくなる風評被害を受けることへの懸念だ。

奧村議長は取材に

BuzzFeed Newsは奧村氏に経緯を取材した。 青森県労連は、労働界の二大ナショナルセンター、全労連傘下の組織。青森県での大間原発や六ヶ所村核燃料再処理施設の建設に反対する立場を取る。 ツイートは「来春に行われる海洋放出を心配していたため」行ったという。 原発関連の記事を読んだりして、海洋放出以外の方法はないかと考えていたが、海洋放出決定時にニュースに映し出された漁師たちの顔を思い出したという。 「漁師の困った顔がまぶたに浮かび、『これ以上漁民を苦しめるな!』という思いでツイートした」 しかし、「感情的にカッとなってツイートしたわけではない」という。「生物濃縮されるというのは、本で読んだ」 ただし、その本の著者は放射性物質や海洋生物の専門家ではない。「筆者の1人が青森に関係がある人だったので読んでいた。今後は様々なメディアや本、文献に目を通すことが大事だと思った」 誤りに気づいたのは「トリチウム水が生物濃縮するのは誤りだ、という根拠をTwitter上で多くの人が示してくれた」からだと語った。 それを読んだ結果、生物濃縮の点については明確に誤りだと感じ、「これ以上ご心配をおかけするわけにはいかない。ツイートを削除した」と話した。 ファクトチェック記事には、以下のレーティングを必ず記載します。ガイドラインはこちらからご覧ください。 また、これまでBuzzFeed Japanが実施したファクトチェックや、関連記事はこちらからご覧ください。

正確 事実の誤りはなく、重要な要素が欠けていない。ほぼ正確 一部は不正確だが、主要な部分・根幹に誤りはない。

ミスリード 一見事実と異なることは言っていないが、釣り見出しや重要な事実の欠落などにより、誤解の余地が大きい。不正確 正確な部分と不正確な部分が混じっていて、全体として正確性が欠如している。根拠不明 誤りと証明できないが、証拠・根拠がないか非常に乏しい。

誤り 全て、もしくは根幹部分に事実の誤りがある。虚偽 全て、もしくは根幹部分に事実の誤りがあり、事実でないと知りながら伝えた疑いが濃厚である。

判定留保 真偽を証明することが困難。誤りの可能性が強くはないが、否定もできない。検証対象外 意見や主観的な認識・評価に関することであり、真偽を証明・解明できる事柄ではない。                                   Twitter               - 17                                  Twitter               - 24                                  Twitter               - 71                                  Twitter               - 61                                  Twitter               - 95                                  Twitter               - 36                                  Twitter               - 83                                  Twitter               - 10