都内のクラブが、何かあった時に公式LINEアカウントを通じてSOSを出せる「HELPボタン」を導入した。 導入した東京都渋谷区の人気クラブ「clubasia」の店長で、運営企業カルチャー・オブ・エイジアのスペース事業部部長の鈴木将さんに、話を聞いた。 「何か困った時に、お客様側からSOSを発信できて、それを瞬時に受け取れる仕組みを作れないかと思い、提案しました」 「Twitterで、『ハラスメントとか何か困りごとがあった時に、スタッフに声をかける以外で、伝えられる方法が何かあったらいいのにな…』という声を見かけていました。それが大きなきっかけです」 繰り返されるクラブ内での痴漢行為やハラスメントに、クラブ運営側がどう対応できるかと考え、設置に至った。

助けを求めるハードルを低く。周りからのHELP要請も

その中で、スマホでクリック一つでSOSを出せることがHELPボタンの長所だ。 clubasiaの公式LINEアカウントには、「緊急 HELP!(STAFFが対応致します)」という赤いボタンがあり、助けを求めたい時にはそのボタンをクリックする。 すると会話画面に「お困りの現在位置を番号でお伝えください」と「メインフロア」「女性トイレ」などの選択肢が出てきて、数字で応答する形になっている。 鈴木さんは「(被害に遭った際などは)文章を作って送ることも難しい状況もあるかもしれないと考え、HELPボタンを押すと、まず問題が発生している場所を番号で伝えるシステムにしました」と話す。 「緊急時にはスピードが大事ですので、SOSを受けたらすぐにスタッフがその場所に駆けつけて対応します」 「困っているご本人だけではなく、困っている人を見かけた周りの人もHELPボタンを使えると思います」 「何かあった時は、被害を発信しづらかったり、言葉にして声を上げることは、ハードルが高かったりもすると思います」 「これまで通り、トラブルを直接近くのスタッフに口頭で伝えることもできますし、その方が早い場合もある。助けを求める方法の『選択肢』はあればあるほどいいと考えました」 HELPボタンは、企業などに向けた公式LINEアカウントの無料機能の範囲内で設置したという。

「すごく助かる」「全てのクラブが採用した方がいい」想像超える反応

clubasiaがHELPボタンの設置を発表すると、想像を超える反響があった。 鈴木さんは「発表してから、お客様からも思っていた以上に『あれ、すごく助かります』と喜んでくれる声がありました」と話す。 Twitterでは、クラブの利用客らから「まじでこれ、最強のシステムです」「全てのクラブが採用した方がいいシステム」などの声が上がった。 非常時の対応について「躊躇してしまうからこそ『駆けつけるよ!』とはっきり意思表示してくれるその気持ちがありがたい」という意見もあった。 「トイレなど一呼吸おくところに案内あればいいなと思い、目線に入る場所に貼り紙を貼っています」 clubasiaがLINEでHELPボタンを設置したことをきっかけに、都内の他のクラブではInstagramのDM機能を使ってのSOSシステムを開始。Twitterでは、さらに多くの場所での導入を望む声があがっている。

「ステートメントを出すだけでなく、もう一歩行動に」

鈴木さんをはじめとするclubasiaが、このようにハラスメントへの対策やSOS発信について向き合う背景には、これまで日本のクラブで起きてきたハラスメント、そしてそれに対するクラブ運営側の対応の問題があった。 2019年には、都内のクラブでの痴漢行為をきっかけに、クラブでのハラスメント対応改善を求めるムーブメントが起きた。 クラブ利用者や関係者らが国内のクラブハウス運営会社に対し、アンチハラスメントのステートメントの掲示や対応改善を求めるオンライン署名を始めた。 その結果、賛同したクラブ運営側が店舗にステートメントを掲示するようになった。 clubasiaも、そのステートメントを日本語と英語で今も店舗に掲げている。 《クラブで踊るために必要なのは、いい音楽だけだろうか。危険だと感じる場所で音楽に意識を集中することができるだろうか。不快な視線に囲まれた場所で、自由に身体を動かすことができるだろうか》 《性別や人種、セクシャリティーや身体的特徴などに関わらず、全ての人が、安全で、支えられ、そして尊重されていると感じる権利を持っています》 《同意なしに体を不必要に触ることや、望まない人に性的な言葉をかけること、差別的な行動などは、他者の権利を侵害するものです》 《安心して精神や身体を開放する事の出来る空間作りの為に一人一人が自分の振る舞いについて考え、実践しましょう》 《安全でないと感じた時や、嫌な思いをしている人を見かけたら、スタッフに声を掛けてください。全ての人が気持ちよく踊れるような、最高のパーティーを一緒に作りましょう》 鈴木さんはこのステートメントに賛同すると同時に、繰り返されるハラスメント問題を見て、クラブ運営側のさらなる対応が必要だと感じている。 「各店舗がステートメントを出すなど意思表明はするものの、なかなか変わらない現状もありました」 「意思表明だけでなく、ハラスメントの現状がまだ今もあることを認めた上で、もう一歩行動を起こして次に進めないと、何も変わらないんじゃないかと思ってHELPボタンを設置しました」 「まだ始めたばかりです。もしSOSがあった時にはすぐにお困りの方を見つけて対応できるように努めていきたいです」

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