9月30日に開かれた厚生労働省の検討会では、これまで出てきた論点がまとめられた。パブコメでは、販売体制や性暴力被害者への対応、性教育などにおける課題や対策について、幅広く意見を募る方針だ。 一方、会議に参加した医師からは「緊急避妊薬は、避妊薬ではない」などとして、「正しい避妊に結びつける指導」の必要性を訴える意見なども出された。 WHOの必須医薬品に指定されており、世界約90カ国では、医師の処方箋なしで、薬局で購入することができる。 一方、日本では医師の処方箋が必要で、価格も海外と比べて高く設定されているため、日本でも必要としている人が確実に入手できる環境を整備する必要があるとの声が高まっている。 30日の検討会で厚労省が示したパブコメ案では、市販薬化が必要とされるニーズや背景とともに、「薬の適正使用」「販売体制」「OTC医薬品を取り巻く環境」の3分野において、これまで挙げられてきた課題と対策がまとめられた。 主な課題には、次のような項目が挙げられた。
年齢制限を設けるべきか本人確認の必要性やその方法妊娠の可能性などについて薬剤師が適切に判断できるか夜間の対応が可能かインターネットでの転売も含む、悪用や濫用の懸念性教育が遅れているため、避妊薬などに関する理解が不十分販売後も含めた薬局と医師の連携方法性暴力被害があった場合に必要な支援とどう繋ぐか
薬の安全性などから見た課題点は、特に挙げられなかった。 厚労省によると、年内にもパブコメの募集を始める方針だ。特に具体的な問いは設けず、取りまとめられた内容を見てどのように考えるか、広く意見を募る方針という。 前田理事は同会の医師の意見に補足する形で、「緊急避妊薬は『緊急避妊薬』という名前がついていますが、『避妊薬』としての役は成しておらず、あくまで予期せぬ性交渉があって、妊娠が危ないと思われた方に、ほうっておくよりは、確率の高い薬剤を提供して、なんとか望まない妊娠を回避しようというもの」と述べた。 さらに「(低用量ピルなどの)経口避妊薬や子宮内避妊具(IUD)などに比べると、避妊効果が全く異なる」「一般的な(妊娠阻止率)の確率で言うと8割くらいということになっているので、5回服用を続けると、避妊効果は5割になってしまう」と発言。 「緊急避妊薬は夢の薬ではない」と言い、「緊急避妊薬へのアクセスを早くしてあげるのは、もちろん必要なことですが、その後、正しい避妊に結びつけるような指導が必要」などと訴えた。 実際に、緊急避妊薬は妊娠の可能性がある性行為から72時間以内に飲むことで、妊娠を避けるための薬であり、コンドームやピルのように日常的に用いる避妊方法とは、使い方が大きく異なる。 しかし、市販薬化を要望している「緊急避妊薬を薬局でプロジェクト」共同代表の福田和子さんは、「WHOの言葉を借りれば、緊急避妊薬は『避妊せずに行われた性交後に妊娠を回避するのに役立ち、“性交後避妊薬”とも呼ばれる』ものであり、性交後に妊娠を防ぐために使用できる『重要なバックアップ・備え』」だと反論する。 「緊急避妊薬は『女性が継続的な避妊法を開始するきっかけを提供するもの』だともされていますが、その後の避妊に関して選択するのは、女性自身です」 「医療者を含む支援者にできることは、一方的な指導ではなく、科学的根拠に基づく情報と選択肢を提供し、本人が望む選択肢を選べるようサポートすることではないでしょうか?」と語る。 あすか製薬が販売する緊急避妊薬「ノルレボ錠」の添付文書によると、妊娠しやすい時期と性交日との差などを考慮して算出する「妊娠阻止率」は、性行為から72時間以内の内服で、81.0%とされている。 「ただ、実際には、人間は常に妊娠しやすい状態である訳でもないので、添付文章でも実際にノルレボ錠を72時間以内に服用した場合の妊娠率は1.34%とされています。複数の服用で5割に下がるという数字の根拠については、説明がなかったため、わかりません」 さらに、「『ほうっておくよりは、緊急避妊薬を飲んだ方がマシという程度のもの』とも取れる発言からは、妊娠したかもしれないという不安を感じたことのある当事者か、そうでないかという違いを強く感じます」と指摘。 「望まない妊娠をするかもしれないという当事者からしたら、ちょっとでもそのリスクを減らしたいわけなので、その不安や緊急避妊薬が持ち得る役割を矮小化するべきではないと思います」と語った。