その団体は、メンバーの誕生日を祝っているらしく、メキシコをテーマにしたコスチューム(文化的なステレオタイプが表れていて危なげだった)に身を包んで、すでに数杯お酒を飲んでいるようだった。 「『僕じゃなくて、君の出番で放り出されたらいいね』と言ったよ。僕たちが想像していたより、ひどいことが起きたけどね」とソレイシー。 エリアスは、午後9時半からオープニングアクトを務めた。いつも通り、ボディ・イメージや女性にまつわるネタを話す中、観客は楽しんでいるように見えたという。 その時だった。例の団体の1人が手を挙げ、エリアスに投げかけた。 実際のところエリアスは、こう返した。 「私がこの部屋で唯一のユダヤ系だってわかるのに、なんでそれを聞くの? 私を殺そうとしてる?(笑)」 「みんな、投票したい人に投票すればいい。私は誰が誰に投票したかは気にならない。今夜ここにみんなが集まったことが幸せ」 すると団体の女性は「じゃあバイデンに投票したんだね」と叫び返す。 「知らない。それが関係ある?」とエリアス。 「バイデンに投票したんだ!あなたのジョークからわかった」 「誰も望んでいないのにあなたがまだ話しているっていうところから、あなたがトランプに投票したとわかるよ」とエリアスがピシャリ。 この時点で、クラブのオーナーが女性に対し、静かにするよう注意をしていた。女性の声を打ち消すため、エリアスは観客に歓声や拍手を求めた。 エリアスが次の話題に移ろうとした、その時だった。缶ビールが観客席から飛んできて、背後の壁にぐしゃっとぶつかった。 「オーマイゴッド!」「それはしちゃダメだ!」「嘘だろ!?」観客から声があがる。 エリアスの判断は早かった。 「最初はショックでした。『本当に起きたことなの?』と。投げられた缶ビールを見て、すぐに思いました。『これを飲まないと。それ以外にできることなんてない』」 ようやく出番を終えたエリアスを、ソレイシーは抱き締めた。エリアスは心を落ち着けるため、夫を呼んだ。団体の別の1人が近寄ってきて、謝罪とともに20ドル(約3000円)のチップを手渡した。 コメディ・クラブのオーナー、ディノ・イベリによると、缶ビールを投げたのは野次を飛ばした女性の夫だという。2人はすぐに店をあとにした。 しかしクラブは、地元警察と今回の件について連絡を取り合っているという。当局は、監視カメラの映像を含め、クラブでの証拠を集めている。 ソレイシーは、エリアスの冷静さとユーモアに畏敬の念を抱いたと語る。 「動画を見たらわかります。勇気あるコメディアンとは、どういうものか」 一方のエリアスは、翌日になってもまだ緊張状態で、自分の行動を後悔したという。 「朝コーヒーを2口飲んで、あー…やってしまった、と思った」 ところが「投げられたビールを飲みほす」エリアスの動画はSNSで拡散され、賞賛の的になった。 独自の写真特集や、思わず共感してしまう体験談、著名人の最新情報から徹底的に掘り下げた調査報道までーー。「世界のイマ」がわかる話題をお届けします。
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January 2, 2023 · 1 min · 26 words · Brenda Pirrone